陳腐化した戦略は固執を生み、硬直化を生む

皆さんこんにちは、くぼみちです。
前回まで「戦略」をキーワードにして

『戦略を立て実行することはいいことなんだが。。。』

『戦略の前の「ビジョン」がすべてに優先する』

『戦略は意味を成さないの立てる必要はない』


とお話進めてきました。そもそも「戦略」というものは日本人が意味をしっかりと理解していないため、言わば「誤用」しているためになんだかおかしなことになっている。そして「戦略」の前の前提条件となっている「目的」(それを崇高な言葉で言うとビジョンやどうありたいかというあり方となりますが)が抜け落ちていることが、今の日本が抱えている問題の根本原因であるとお話させていただきました。

で、前日の記事で、前提となる目的(ビジョン)が抜け落ちている戦略は意味を成さないこと、そして、現代社会のスピードを考えると「戦略」を立てたそばから陳腐化していくということをお話させていただきました。で陳腐化ならまだマシなほうで、もっともっと大変なことを起こる可能性があると最後に含みを持たせてしまったのですが、本日はその含みについてお話させていただきたいと思っています。

で、いきなりの結論なんですが、陳腐化した戦略は固執を生み、硬直化を生むことになってしまいます。
えっ、どういうこと??という声が聞えてきそうですが、順を追ってお話させていただきたいと思います。

例えばとある会社(ゲーム製作会社とでもしましょう)できっちりとした「戦略」が立てられました。
経営戦略部とかあるんでしょうか、ここら辺の部署が全社に向けて「我が社は今後任天堂DS向けのゲーム開発に注力していく」と高らかに宣言しました。
経営戦略部としては、過去3年の傾向から、DSの市場が今後も大きく拡大するのは間違いない「分析した段階」では結論が出たわけで、自信をもっての「戦略発表」となりました。

ところが、市場が、ある日急速に勢いがなくなってしまいました。現場の人間からは「これはチョット厳しいんじゃないか〜DSは」と言う声もチラホラ聞えてくるわけです。現場に焦燥感が出てくるわけです。がんばってもがんばってもなんだか結果につながらないと。

そんなときに一筋の光明が見えてきます。スマホ向けゲーム市場というまったくの未開の地です。なにせ、今までスマホを持っていなかった人々がどんどんスマホに乗り換えているわけです。そして今までリーチできていなかった層に向けてゲームを売ることができる。これはおいしい市場です。
現場は早速、スマホ市場への参入を検討し、準備を始めます。この流れに乗り遅れてはいけない、一筋の希望に現場の士気もあがります。

ところが、経営上層部はスマホ市場参入にNoを出します。
そもそも今回の戦略でDS市場に注力していくときめたのだ。これは中期計画なので、少なくとも3年はこの戦略に沿って事業を進めるという方針でした。その間経営戦略部は現状分析に明け暮れ、次の発表までの3年で新たな戦略を検討することとなります。

で、3年後に出た戦略は「スマホ市場に参入する」ということ。
すでに出遅れた状況で、どうやってこれからやっていくのでしょうか?現場のため息が聞えてきそうです。。。

いかがでしょうか?
話をわかりやすくするために簡単な例でお話させていただきましたが、これと似たようなことは、個人でも、組織でも、社会でも、いってしまえば国レベルでもありますよね?そうなんです、「戦略」と言うものを立てるとどうしてもそれに「固執する」という現象が起こってしまうわけです。そしてそれが規模の大きい組織であればあるほど、階層構造が多い組織であればあるほど「固執度」が高まってしまうことも容易に想像できるかと思います。

我々は子供のころから「目標を持って、それに向かってがんばることが大切だよ」と教育させれてきました。それは確かに大切なことです。がしかし、そのために「目標に固執する」という負の現象も同時に生み出してしまっているということに意外と気づいていません。だからなのかわかりませんが、組織でも「戦略」というものが策定されると、どうしてもその流れに沿って忠実にやりきろうとする傾向があるように私は感じます。その結果、流れがまったく変わってしまっているにもかかわらず、「戦略」に固執してしまい、決定的な遅れを作り出してしまうわけです。

チョット昔のように、もう少し時間感覚がゆっくりとしていた時代ならば、じっくり腰をすえて「やりきるまでやる」という姿勢は結果として正解だったのかもしれません。がしかし、今のようにめまぐるしく流れが変わる次代においては「やりきるまでやる」はともすると「固執」につながり「硬直化」を生み出すことになります。その結果致命的な失敗につながるなんてことも起こりうると私は思っています。

では、こんなにめまぐるしく変わる時代にどうやって生き抜いていけばよいのか?
それについては、また次回に書かせていただきたいと思っています。

本日もありがとうございました。